吃音は100人に1人いると言われており、決して珍しくはありません。
ただ症状が分かりやすいので、目立つということがあると思います。
我が家の次男は入園直前だった3歳から吃音が出始め、7歳の現在も治っていません。
吃音の程度も軽くはありません。
ネットや本で吃音について調べることはできても、実際我が子にどうしてあげたらよいのか、どのような場所で相談したらよいのか悩むと思います。
地域によっては、相談できるところがないという方もいらっしゃるかもしれません。
今回は言語聴覚士さんに聞いた話を元に、2~6歳までの子供の吃音と小学校入学後のことばの教室についても書いていきたいと思います。
今回のお話は次男が面談した言語聴覚士さんから聞いた話が中心です。
言語聴覚士さんにより様々なご意見があると思います。参考程度にお読み頂ければ幸いです。
吃音とは
吃音は主に3種類の症状があります。
吃音とは
コトバンクさんから引用させて頂きました
連発性は繰り返し、難発性はブロック、伸発性は引き伸ばしと言われることもあります。
こちらのサイトに吃音の詳しい説明や吃音に伴う他の症状も載っていますのでリンクを貼ります。
日本吃音臨床研究会
改めてこちらのサイトを見たら、次男はこのページに書かれているほぼ全てが当てはまります。
随伴症状も出ますし、音読や歌では吃音は出ません。
こうやって文章で見ると重みがありますね。
うちも文章で「あなたの子供はこんな症状です」と手渡されたら、ショックが大きいかもしれません。
吃音を相談した理由
次男の吃音の詳しい経過についてはまた改めて書くことににして、小児科の受診を経て、言語聴覚士さんとの定期面談により得た情報をお伝えしたいと思います。
ざっくりと次男の吃音について書くと、入園が近付いた3歳のある日突然次男の吃音は始まりました。
私は身近な人に吃音を持つ方がいたので、次男が吃音であることにはすぐに気が付きました。
ネットで調べると、一時的なもので終わる場合もある、小学校にあがる頃には治まることが多い、とありました。
私個人としては、吃音がある方の喋り方は全く気になりません。
次男の言葉も少し様子をみてもいいかなと思ったのですが、入園が近い事、繰り返しが発症から数日で酷くなり、最初の言葉を10回近くも繰り返すこと、そして小児科で相談しようと思った一番の理由は、夫が「次男が吃り過ぎて面白い」と笑っていたことです。
悪意がないにしても、家族の中で次男の話し方を見て笑う人がいる。
私はHSP的な過敏さで、心がザワザワと落ち着かなくなりました。
次男の話し方を真似する夫。
何も分からずに無邪気に笑う次男。
夫はいつか次男の心を傷つけるかもしれない。
治す治療のようなものがあるんだろうか。
あるなら、早くした方がいいのかもしれない。
いざ相談に行った時「もっと早く来てくれれば良かったのに」と言われたら、どれ程後悔するだろう。
吃音が出てから1週間した頃、小児科に相談をしに行きました。
小児科受診
小児科で聞くと
「小さい子には言葉の発達の過程でよくあることなんだよ。様子を見て大丈夫。」と言われました。
寒い季節で風邪はひっきりなし。
先生は受診の度、診察が終わると
「どう?言葉。変わらない?」と聞いてくれました。
ある時
「ひかるくん、ちょっとあっちのおもちゃで遊んでてくれる?」と次男を別室に行かせました。
「言葉はどう?」と聞かれ
「変わらないです。」と答えました。
「対処としては、知らないふりをしてね。
何もないようにいつも通りに。
本人が意識すると酷くなることがあるから。」
だから次男を離れた部屋に行かせたのか・・と思いました。
先生は言いました。
「ひかるくんのお兄ちゃんってチックがあったよね?吃音とチックは似たところもあってね、あまりそのことについて触れない方がいいんだよ。」
長男はチックが出たことがあり、それもある日突然始まりました。
私も長男も吃音が気にならないこともあって、次男との生活は何も変わりませんでした。
長男に頼むまでもなく、次男の吃音について話題になることはなかったのです。
気になるのは夫が次男を傷付けないかということだけでした。
3月になった時、私は小児科受診のタイミングで再び相談しました。
杏「間もなく入園です。園には言葉のことを話して、問題ないから大丈夫ですと言われました。
それでも少し気になっていて・・。
もう3月くらい経ちましたし・・。」
「そっかぁ・・。相談場所を紹介しようか?
もう少し様子を見ても大丈夫かなと僕は思うんだけど、お母さんが心配なら一度話を聞いてみてもいいと思うよ。」
とかかりつけの小児科の先生がくれたのは、子供の発達に関して相談できる機関でした。
電話をすると、言語聴覚士さんに相談できると言われ、面談が決まりました。
ネットで見ていたら、言語聴覚士さんにはなかなか会えないと書いてありましたので、言葉の専門家である言語聴覚士さんにこんなに早く会える機会ができて嬉しく思いました。
言語聴覚士とは
言語障害や聴覚障害がある方に対する指導や支援を行う国家資格が必要な専門職。
STとも呼ばれます。
言語聴覚士さんと面談
入園から2ヶ月が経とうとしていた5月、最初の面談に行きました。
言語聴覚士さんと、子供の発達に関して担当して下さる方の2人がいました。
最初に吃音についての説明がありました。
吃音発症の傾向
連発、難発、引き伸ばしの話はもちろん、世界各国、どの言語でも同じ割合で吃音を発症するということを教えてくれました。
そして吃音発症には以下の傾向があるそうです。
- 男の子に多い
- 3~4歳が発症のピーク
- 下の子が生まれたタイミングに多い
次男も娘が生まれ、少し大きくなった頃の3歳に吃音が出ました。
男の子だし、うちはこの傾向にピッタリ当てはまります。
吃音の治療方法
吃音は原因が不明なので、特効薬もこれが絶対に正しいという対処方法もないと言われました。
原因が不明なのに、これが合っている、これが間違っているというのは言い難い。
吃音だけを見るのではなく、本人の全体の様子、性格、気質、生活環境など、様々なことを考えて、対処方法を考えていく方が吃音と上手に付き合っていく方法を見つけやすいそうです。
吃音は良い時と悪い時の波を繰り返す人が多く、その波を繰り返しながら、穏やかに吃音が軽くなっていくのを目指すのが理想、というのが面談した言語聴覚士さんの考えでした。
必ずしも皆に当てはまらくても、こうすると良い場合が多い、こうすると悪化する、というのはあるんだそうです。
また、「こうなのではないか」といういくつかの考えられる原因もあるそうなのですが、断言ができないので現段階では原因不明になっています。
「明確な治療方法はない」と言われましたが、私はそれを受け入れました。
吃音をこじらせるとは
「すぐに改善させることは難しいけれど、急激に悪化させるのは簡単なんです。」と言われ、私はドキッとしました。
それは身近にいて接する人が、吃音をしつこく指摘したり、言い方を直したりして、話すことに対して強い緊張を持たせるようなことをした場合、吃音はみるみる悪化していくんだそうです。
言語聴覚士さんは吃音をこじらせるという表現をしていました。
これは吃音を持つ本人がこじらせるのではなく、周りにいる人の間違った対応でこじらせてしまうのだということです。
吃音をこじらせている状態というのは、吃音の程度が酷くなったり、吃音の波を繰り返す中で、悪い時の日にちが長引いたりすることを指していると言っていました。
吃音が減った?の勘違い
吃音を気にするあまり、話さなくなってしまう状態が一番困ると言われました。
沢山話していると吃音は目立ます。
周囲の人は吃音が酷くなったと感じるかもしれません。
話さなければ吃音は出ません。
周囲の人は吃音を聞く機会が減り、軽くなったと勘違いするかもしれないのです。
話さないということは気持ちを抑え込み、我慢している状態です。
自分の気持ちや、伝えなければ困るようなことでも言わない。
そんな辛い状態でも、吃音が出るよりいいと思ってしまったとしたら・・?
こんなに辛いことはありません。
親としては子供の吃音を聞くことが辛く悲しい時もあると思います。
時にはイライラしてしまうことも正直あったりすると思うんです。
でも、思考と言語能力一致していない、バランスがとれていないことも吃音の原因の一つと考えられているので、どんどん話さないと話す練習になりません。
一概に吃音が減ったから良いとは言えません。
ただ喋っていないだけかもしれないのです。
母親の前で一番酷くなるのはなぜ?
これは相談に来る多くのお母さんが言うそうです。
私も同じことを言いました。
幼稚園での様子を見ているとそれ程でもないのに、家に帰って来て私と話した途端に吃音が酷くて会話にならない程だったりします。
私は最初、私と話すとストレスが強いのかなと思っていました。
当時は夫と一緒に暮らしていましたから、喧嘩をする姿を見せてしまうこともあったり、下の娘はまだ小さく片時も手が離せない状態でした。
長男は中学に入学し、慣れない中学校生活で体調を崩し、病院に行ったりもしていました。
次男にかけてあげられる時間は限られていて、次男のストレスで思い当たることは?と聞かれると、いくつでも出てくるのです。
私の前でだけ酷くなる吃音を、とても悲しく、責められているようにも思っていました。
私がそう言うと、言語聴覚士さんは言いました。
「お母さんの前ではリラックスし、話したいことが沢山あるんです。
吃音は、何かを順序立てて話そうとしたり、何かを説明しようと頭で考えていると、酷くなる傾向があります。
園での話を一生懸命思い出して、楽しかった話、嫌だった話、次々と話したいことが沢山浮かぶのでしょう。
思えば思う程、今のひかるくんは吃音が出ます。
でもそんなことはお構いなしに、とにかくお母さんに話したい気持ちが溢れます。
園では子供なりに気を遣って話したり、そもそもそんなに長いお話をする機会がないんですよ。
まだ3歳、4歳の子供同士のやりとりなんて、お互いの話が通じていないのが当たり前で、先生にもトイレに行きたいとか、これがやりたいとかそのくらいの話の中で吃音が出ても目立ちません。
お母さん、ひかる君の目を見て、表情を見て下さい。
そんなに辛そうな顔をしていますか?」
そう言われて、私は次男の表情を思い出せませんでした。
どうして私の前でだけ?とそればかり考えていたのです。
言語聴覚士さんが言うには、
身近な心を許している相手に話す時に吃音が酷くなる、でも本人は楽しそうに話している場合は、リラックスし、沢山話したいという気持ちになっているので、聞いている側は自信を持ってほしい
ということでした。
吃音がある子の気質
優しく繊細。気遣いができる子が多いそうです。
次男はHSCの気質もあるので、繊細すぎる面があります。
自然に治る場合と治らない場合
先程書いた極端にこじらせるような状態がなければ、なにもしなくても治っていくことが多いんだそうです。
ただこれは、本人や周りの努力ではどうにもならない部分があり、どんなにリラックスして話せるようにしていても、完全には治らないこともあるそうです。
1つの目安は、小学校入学までに治るか治らないか。
自然に治る場合は小学校入学までに治ることが多く、入学後以降も続くようだと、長引く傾向があるそうです。
3歳の年少さんで相談した時、言語聴覚士さんは「治らないまでも、こじらせずに年長さんまでもっていきたい」と言いました。
年長さん(6歳)の時に吃音の状態がどうかというのは、その後の吃音との付き合い方を決める1つの目安になると言っていました。
娘が4歳になってすぐの頃、吃音が出ました。
初めは大好きなお兄ちゃんの真似をしているのかなと思いました。
幼かった娘はとにかく次男と同じことをするのが好きで、何でも同じがいいと言っていたのです。
1週間くらいした時に、とても4歳の子が真似できるような話し方ではない、これは本当に吃音なんだと思いました。
でも2ヶ月もした頃、すっかり吃音は消えたのです。
一時的な吃音というのが本当にあるんだなと思いました。
それ以降も娘の吃音が出ることはありません。
吃音と訓練
次男が年中さんの時に、吃音が悪化した事がありました。
それまで波を繰り返していたのに、悪化したまま2ヶ月近くが過ぎました。
あまり吃音が気にならない私でも、言葉が詰まりすぎて苦笑いをしながら途中で会話をやめてしまうようになった次男が可哀想に思ったのです。
会話をやめてしまうということは、言語聴覚士さんが言っていた「話さなくなるのが一番困る」状態。
私は焦りました。
面談で、「訓練のようなものはあるのでしょうか?もしあるなら早く受けた方がいいのかと思って。」と聞くと意外な答えが返って来ました。
「どうしても訓練をさせたいですか?もしお母さんが強く望むなら、そのような場所があるか調べてみます。」
この大都会東京の、あちこちから吃音の子が集まるであろうこの場所で、訓練をしているところがあるのかが分からないということが意外でした。
私が望むというより、次男の酷い吃音を見て、改善した方が良いとはならないのだろうか?
話を聞くと
「吃音は本人が意識することで悪化する場合があります。
入学前までのお子さんは自然に治っていくことも多いので、極端に悪化していかない限り慎重に様子を見守ります。
小学校入学後も吃音が残るお子さんは、本人も吃音に気付いています。本人に意識させないような生活から、吃音とどうやって付き合っていくかを本人と共に考えていけるようにしていきます。
訓練をするということは、「あなたは吃音がありますよ。」ということを強く意識させるということです。私は今のひかるくんにそれが合っているとは思いません。
なぜならひかるくんは、今は確かに吃音が酷いですが、変わらず楽しくお話しているし、全ての会話をやめているわけでも、口数が減ったわけでもない。
年中さんになり、ますます知識や感情表現は豊富になり、ひかるくんが話したいと思う言葉もどんどん多く複雑になっているように見えます。」
確かに次男は、年齢に合わない難しい言葉を使うようになっていました。
言語聴覚士さんに「親である私の意見は尊重したい、私が強く望むのであれば、そのような場所を紹介したい」と言われました。
ただ、先程の理由から、未就学児には訓練のようなものをすすめていないのだそう。
私が思っていた、早いうちに訓練を始めれば吃音が治りやすいという事実はないのだそうです。
そうですよね、それで治るなら、皆さんそうしていますよね。
言語聴覚士さんは私よりもずっとしっかりと次男を見て、理解してくれていたのです。
深く反省。
私は訓練先を探すのをやめました(あっさり)
ただ、私が別の方から聞いた話ですが、子供の吃音に対する対処を指導してくれる場所もあり、それで吃音が治った方もいるそうです。
成長と共に変化していく場合も多い吃音は、訓練での成果なのか、自然に治っていくタイミングだったのかは分からないと言っていました。
または入会金が数万円、年会費も1万円近く、という民間の施設の話を聞いたこともありましたが、気軽には行ける金額ではありませんでした。
怪しい所??と思ってしまいましたが、至って熱心に真面目に活動されている所でした。
東京で場所を確保するだけでもお金がかかり、活動を維持する為にお金がかかるのだそうです。
これは物価が高い東京ならではなのかもしれませんが、民間の機関はネットで調べて見つけてはみても、実際そこに子供を連れて訪れるには少し躊躇われる気がしています。
ことばの教室とは
言語聴覚士さんとの定期的な面談は幼稚園までで、小学校からは学校を通しての通級指導であることばの教室になると言われました。
通級とは
軽度の障害をもつ児童生徒が、通常の学級に在籍しながら、障害の状態に応じて特別な指導を受ける教育形態。
[補説]ほとんどの授業を通常の学級で受けつつ、通級指導教室で自立活動や各教科の補充指導などの授業を受ける。言語障害・情緒障害・弱視・難聴・学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)などが対象。
コトバンクさんから引用
軽度の障害と言われると少し気が重くなるかもしれませんが、実際はそんなことはありません。
通級の中でも言葉に特化したことばの教室は、吃音だけではなく、読み書きが苦手、発音が苦手な部分があるなど、様々な理由で通われているお子さんがいます。
詳しく書くと長くなってしまうので、また別の機会に書こうと思いますが、ことばの教室を含めた通級指導は、長男が小学生の頃も通われているお子さんのお話を何人か聞き、現在も次男や他のお子さん数人のお話を聞いた限り、「すごく楽しい!!」と皆が言います。
通常の授業と同じ扱いになり、欠席にはなりません。
親も頻繁に先生と会え相談する機会がありますので、その点も安心かなと思います。
料金は無料です。
これは学校により違うのかもしれませんが、通級に通いたいと思った場合申請が必要で、審査に通らなければ通うことができません。
次男の場合、3歳から3年近く言語聴覚士さんとの面談を繰り返していました。
その記録が申請の時に役立ち、ことばの教室には通えると思うと言われました。
実際次男の申請はスムーズに通り、楽しく通えています。
まとめ
こうしてまとめてみると、私は次男が吃音を発症した3歳にすぐ行動し始め、我ながら自分のHSP気質を実感しています。
ただこれは、私は時間が取れるからできることかもしれません。
そして、現在7歳の次男ですが、吃音に関しては当初とあまり変化がありません。
この記事を読んで下さった方の中には「ここまで対応しなきゃいけないのか」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
でも次男1人だけの話ではありますが、ここまでしても大きな改善はない場合もある、ということも1つの結論なのかなとは思います。
次男は自分の吃音を受け入れ、私も次男の吃音を悲観することもなくなりました。
吃音が治るのに越したことはないのですが、自然にいつかそうなる日が来るならそれを待ちたいし、来ないのなら吃音があっても楽しく過ごせる方法を探した方がずっと良いのです。
ここからは大人も含めた話になりますが、吃音を持つ方が一番辛いのは「周囲の目」ではないでしょうか。
話し方ではなくて、話している内容に目を向ける。
周囲がそうすることで、吃音を持つ方の負担はぐっと減ります。
吃音を持つ方が何か不便な点があり、その為に必要だと思われる対策を取るのは良いですが、周囲の理解のない人により傷付けられ、そのような思いをしない為に努力するのは疑問があります。
吃音の理解がある人が増えて、誰もが話したいことを話したいように話せるようになる事を願いつつ・・また書いていきたいと思います。
とは言え、子供の吃音はとても心配ですよね。
100人に1人と言っても、身近にいなくて話せる相手がいない。
そんな方は是非Twitterの@anzu_hahaで話しかけて下さい。
ちゃっかりブロガーを名乗ってます笑
おすすめの本
吃音のことがよくわかる本
Amazonの評価は様々ですが、個人的にとてもおすすめです。
3歳~6歳まで担当して下さった言語聴覚士さんがしてくれたお話、現在のことばの教室の先生がお話されていることが、そのまま載っています。
どこにも相談に行ける所がない、という保護者の方に特におすすめです。
文字が大きく絵も多いので読みやすいです。
吃音の理解が深まり、具体的な対策や接し方、考え方が載っていますので、不安が解消されると思います。